セミナーで反響が大きかった「空焚き厳禁」のお話


セミナーで反響が大きかった「真空管の空焚き厳禁」のお話

こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド 代表の佐々木です。

平成23年9月23日開催の「ギタリストのための感動の真空管聴き比べセミナー」で、真空管の空焚きについてお話をしたのですが、第1部、2部共に、一同「それは知らなかった」と驚いていた様子だったので、本ブログでも公開したいと思います。

セミナーにご参加いただいたスタジオノアの井田さんからも、スタジオのマニュアルに記載されている重要事項として、改めてご質問いただいたほどです。

真空管式のギターアンプの場合、「メインスイッチ(またはパワースイッチ)」と「スタンバイスイッチ」という2スイッチ方式が採用されているものが多いのですが、問題は、スイッチの操作方法に都市伝説があることです。

みなさん、アンプを使い始めるとき、どのようにスイッチ操作しますか?

きっと、こんな方法じゃないでしょうか。

(1)メインスイッチをオンにする。この後が運命の分かれ目ですが、真空管は十分に暖めないとだめだから、最低10分はこのままにしよう。

そして、10分後

(2)スタンバイスイッチをオンにする。

「うん、うん、そうだ」という声が聞こえてきそうです。

ところが、上記方法では、パワー管の寿命を縮めます。

都市伝説では、暖める時間が長ければ長いほど、いい音が出るなんていう、信じられない話も聞きますが、私の講義を受けたギタリストの皆様と、本ブログをみている方は、絶対にまねしないでください。

つまり、メインスイッチをオンにした状態では、パワー管のヒータだけが点灯している状態で、プレート電流が流れていませんので、私が命名した真空管の空焚き」状態となります。

この空焚き中に、中間層抵抗(Interface Resistance)がどんどん生成され、等価回路ですと、カソード電極に直列に挿入されます。

この中間層抵抗は、カソード電極の基体金属と酸化被覆との間に生成され、結果として、内部抵抗が増加し、プレート電流が流れにくくなり、いずれ、寿命となります。

ちなみに、一般的には、中間層抵抗は、上記基体金属中の還元性不純物が表面に拡散した後、バリウムと化合した、けい酸バリウム(Ba2SiO4)の層のことです。

中間層抵抗は、スタンバイスイッチがオフの状態、言い換えれば、プレート電流が流れない状態のときに、生成が著しくなります。つまり、真空管の空焚き中にどんどん抵抗が大きくなっているということです。

経済的には、世界中のギタリストに、どんどん空焚きしてもらったほうが、真空管屋は儲かるのです(笑)。

ここで、真空管を暖めることは、電子放出、つまり真空管動作を安定させるために重要ですが、メインスイッチだけオンの状態では、ヒータ電極しか点火していませんので、発熱量が少なく、全体の加熱効率が落ちます。それよりも、メインスイッチ+スタンバイスイッチを両方いれたほうが、プレート電流が流れるため、加熱効率が格段に上がり、早く、安定化します。

こういう観点からも、メインスイッチだけで空焚きすることがいかに無意味かということがおわかりいただけだと思います。

最後に、ヴィンテージサウンド 佐々木がお奨めする正しい、スイッチ操作を伝授します。

【使い始め】

(1)メインスイッチをオン

(2)1分後に、スタンバイスイッチをオン

(3)プレート電流が流れた状態なので、素早く温度上昇します。5分(心配症な方は10分)も待てば安定します。演奏を開始してください。

【10分程度の休憩する場合】

(1)スタンバイスイッチをオフにせず、そのまま待機させたほうが、いいと思います。

【それ以上休憩する場合】

(1)スタンバイスイッチをオフ

(2)すぐに、メインスイッチをオフ

(3)再開時間の5分前(心配性な方は10分前)にメインスイッチをオン

(4)1分後にスタンバイスイッチをオン

【終了時】

(1)スタンバイスイッチをオフ

(2)すぐに、メインスイッチをオフ

この方法が最も真空管に優しいオペレーションです。

中間層抵抗の話は、真空管の教科書には必ず載っておりますが、今時、真空管の教科書から勉強される方はいらっしゃらないでしょうから、誤った知識が蔓延しているのだと思います。

ギタリストの皆様、気を付けてくださいね。

次回のセミナーでは、もっと面白い真空管の話をたくさんしますよ。

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2011.9.25

              

Good music !

(c) 2011 VINTAGE SOUND

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