ポキッと真空管が折れた?(番外編)

ポキッと真空管が折れた?(番外編)

こんにちは、真空管専門店 ヴィンテージサウンド 代表の佐々木です。

本日、3回目の投稿です。

真空管と戦争というテーマを考えるとき、忘れられないお客様がいらっしゃいます。

あれは、暑かった2010年8月の上旬だったと思いますが、いつものようにオフィスで仕事をしていたところ、昼下がりに、真空管ヘルプデスク(0120−194−380)に1本の電話がかかってきました。

早速、電話を取って、

「お電話ありがとうございます。ヴィンテージサウンドでございます。」

そうすると、

「あのー。えーと。そのー。」と、かなりのご高齢の男性のお声で、どう質問して良いのか躊躇なさっている様子。

真空管をお探しですか。なんでもお気軽に聞いてください」とお声を掛けると。

「いまでも、真空管が売っているのですか。死ぬ前に真空管を手元に置いておきたくて、電話をしました。」

と少し湿った声に続いて、

「実は、私は、高知県に在住で、今年85才になるYという者です。少し話しを聴いてもらえますか。」

「ええどうぞ」

「私は、先の大東亜戦争(注:太平洋戦争のこと)で、陸軍の通信兵として朝鮮半島にいましたが、あるとき、無線局の無線機が故障しました。」

「故障個所を究明しているうちに、真空管が不良であることがわかりましたので、それを上官に報告すると、その場所からかなり離れた別の部隊に行って、真空管をとってこい、という命令が下りました。」

「別の部隊までは、片道1日くらいかかるので、正直行きたくありませんでしたが、上官の命令は絶対ですので、仕方なく、私一人で、真空管を取りに出発しました。」

「それから、1日がかりで、無事、真空管を受け取り、自分の部隊へと帰路につきました。」

「そして、丸一日かけて、ようやく無線局に着くと、信じられない光景が広がっていたのです。」

「私がいない間に、無線局が敵兵の襲撃を受けて、そこにいた全員が銃殺されていたのです。もちろん、私に命令を下した上官もです。」

私は、一瞬言葉を失い、頭の中には、旧式で大きい無線機、モールス信号用の電鍵、マイクロフォン、ヘッドフォン等が並ぶ無線局内に血まみれで倒れた通信兵たちという、悲惨な光景が広がりました。

「そうでしたか。」という言葉しか出ませんでした。

「私は、あのとき真空管を取りに行かなかったら、戦友と同じく殺されていたと思います。真空管に命を助けられたのです。」

「この話は、いままで、誰にもしていません。貴方が初めてです。」

「私も85才と、この先、どれくらい生きられるか判りません。だから、せめて、真空管というものを自分の目の届くところに置きたいのです。」

「お気持ちは伝わりました。私のコレクションの中から、太平洋戦争当時の真空管をお譲りいたします。」

ということで、私は、当時のナス管、ST管をセレクトし、Y様に発送させていただきました。

こうして、今、思い出しても、胸が詰まります。

我々は、今の日本が先人の犠牲の上に成り立っていることを決して忘れてはいけません。

そして、戦争は絶対に嫌だ。

つづく

2011.1.13                       

Good music !

(c) 2011 VINTAGE SOUND

まずはお電話ください。 メールで真空管の質問をする

パワー管交換の前に見て下さい。

オーダーメイドの「真空管選び